急な暑さに立ち向かう栽培現場 朝顔巡回指導第2回


6月中旬から突如暑くなった2025年。この暑さの中で「せいせき朝顔市(第43回ふるさと多摩夏まつり)」に向けて朝顔を育てる農家の方々はいったいどうしているのでしょうか?

今回は、専門家(南多摩農業改良普及センターの職員)が農家のハウスを巡って栽培指導をする「朝顔巡回指導」に同行取材しました。7月のせいせき朝顔市で販売される美しい朝顔。その舞台裏の裏側にある奮闘をレポートします!

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「草丈が伸びない…」若手農家の悩み

2025年6月19日、JA東京みなみ多摩支店に集合し、いざ出発です。

巡回に同行するのは、南多摩農業改良普及センターの佐々木一総さん、JA東京みなみの尾形則和さん、多摩市職員です。

最初に訪れたのは、若手農家の須藤晃延さんのハウスです。

須藤さんの新しいハウスは一日中陽が当たり、ハウス内の気温が上がりやすいのだとか。 「朝顔の成長が良くないんです。背丈が伸びないのに花芽がついてしまって…」と、心配そうに話す須藤さん。

それに応えるのは佐々木さんです。

「扇風機を増やすと良いかもしれません。風通しを良くして、ハウスの中の風を外に出して熱を貯めないのが大切ですよ」と的確なアドバイス。

「2台目の扇風機を買おうかな」と須藤さん。 どう対策すればよいか、いろいろ話を聞いていました。

ここから須藤さんも一緒に、先輩農家のハウスを巡ります。先輩のノウハウや技術を見て学ぶ、大切なことですね!

先輩たちのハウスへ

二軒目に訪れた濱田眞治さんのハウスでは、花芽が丁寧に取り除かれていました。

佐々木さんによると、花芽を摘むことで株の成長を促すのだそうです。 細かいことの積み重ねが立派な朝顔を育てるのですね。

三軒目、農業委員会会長の萩原重治さんのハウスでは、奥様の久美子さんが「6月なのにこんなに暑いなんて!」と驚きの声をあげていました。

情報交換に余念がありません

「バランスよく育っていますね。草丈が揃っています」と佐々木さんは太鼓判を押します。ハウス内には様々な種類の朝顔があり、中には珍しい形の葉の鉢もありました。

秘密兵器?ハウスに塗る「日焼け止め」

「一気に暑さが来たから朝顔がダウンしちゃったよ」と話すのは、4軒目のベテラン農家の萩原弘さん。水やりの具合を佐々木さんに尋ねます。

佐々木さんは「一昨日からとても暑くなりましたし、葉が少ししんなりするのは仕方がないです。夕方はどうですか?」と細かく聞き出していました。急な暑さに対応するため、さらに工夫できることがないか探ります。

一通りの相談が終わった後、須藤さんが「自分のところは成長が遅い状況」と発言すると、萩原弘さんは若手の須藤さんに「最初から草丈が伸びなかったの?」と自ら声をかけていました。親身になって話を聞き、自身の経験を伝えようとする姿が印象的でした。

そして5軒目、太田茂さんのハウスで「秘密兵器」を発見! ハウスのビニールが、ほんのり白くなっています。 これは「遮光剤」という、ハウスに塗る日焼け止めのようなもの。 強い日差しを和らげ、ハウス内の温度上昇を抑える効果があります。

遮光剤を塗ったハウスの屋根

太田さんは2日前に遮光剤を塗ったそうです。おかげでハウスの中は光が柔らかく感じられます。

「虫はどうですか?」と心配する太田さんに、佐々木さんは「カメムシは数が少しでしたらとるといいですよ」とアドバイス。「くさいなあ…笑」と返す太田さん。ユーモアあふれるやり取りに、現場が和みます。

最後の小暮和幸さんのハウスに着いたのは正午近く。ハウス内はまさに熱気との戦いです。

「暑さ対策を優先していきましょう。ハウス内で開けられるところは全部開けて、熱を逃がすとよいですよ」という佐々木さん。

葉の様子を2人で確認

今回も無事6軒の巡回指導を終えました。

農家の方々は専門家や仲間と知恵を出し合い、急な天候の変化にも対応して、朝顔を大切に育てていました。朝顔市を彩る美しい花々には、農家の方々による工夫と努力の舞台裏があるのですね。

(M. H)

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