はざかい期ってなに?【用語解説シリーズ その6】

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はざかい期ってなに?

農家さんの庭先直売に行くと、品物がぜんぜん無い!っていう経験、誰しもありますよね。

野菜には、どうしても品目の数や収穫量が少なくなってしまう時期というものがあります。

それをはざかい期(端境期)と言います。

品物が少なく寂しい、はざかい期の直売所の店頭

今回はどうしてはざかい期ができてしまうのかを解説していきたいと思います。

ちなみに、スーパーマーケットの売り場にはざかい期はありません。

なぜなら全国、あるいは海外から、品物が送られてくるからですね。南の方から出始めて、北の方に産地が移っていきます。

これを「産地リレー」と言います。

多摩市のはざかい期は?


多摩市での野菜の品目数や量が少なくなるのは、2月から4月にかけて、そして8月終わりから10月前半にかけてです。

春のはじまりと秋のはじまり、と覚えておきましょう。

もっとも、その時期に採れる特産品もあります。

多摩市では、3月にアスパラガスや江戸東京野菜ののらぼう菜が出てきます。9月には栗や落花生が出てきて、もうすぐ秋が訪れることを教えてくれます。

のらぼう菜が来れば春はもうすぐ♪

はざかい期がある理由とは?

農家さんも1年通して、新鮮な野菜を楽しんでほしいと思っています。

ですから、できれば、収穫できる野菜が少なくなる時期はなくしたい。でも、どうしてもはざかい期は避けられません。
なぜなのでしょうか?

収量が小さくなったり、リスクが大きい

植え付けや種まきの時期を、遅くしたり早くしたりということをチャレンジしている農家さんもいます。

種メーカーも「極早生」(ごくわせ)や「晩生」(ばんせい・おくて)など、時期をずらすための品種を開発しています。

早生:一般的な品種より早く収穫ができる
晩生:一般的な品種より遅く収穫時期が来る

しかし、野菜は生き物なので、一番たくさん採れる旬の時期というものがあります。そのタイミングをずらすと、収穫できる量が少なくなったり、思ったほど大きくならなかったりということがあります。

また、的確なタイミングをずらすと病虫害や災害のリスクも上がります

たとえば、7月に出てくることが多いトウモコロシは背丈が高いので強風に弱いです。

なので、遅く植えて8月や9月の収穫を目指すこともできるのですが、遅ければ遅いほど台風に襲われるリスクが高くなってしまいます。

なので、種まきの時期を早くしたり遅くすればいいじゃないか、と言うのは簡単なのですが、実際には難しいことが多いのです

植物生理上、植えられない

リスクが大きい小さい以前に、植物生理上、植えられないこともあります。

たとえば、オクラは春先に播く夏野菜ですが、もしも霜が降りたら全滅になります。南国原産の野菜はそういうものが多いです。

なので、春に急に寒くなっておりる霜(遅霜と呼ばれる)の可能性がなくなってから植えることになります。5月のGWごろから畑で育ち始めるので、オクラを食べるには夏を待たないといけません。

また、とう立ちという生理現象もあります。

キャベツやダイコンなどのアブラナ科の野菜に多いのですが、ある時期になると花を咲かせるために茎を上の方に伸ばし始めます。とう立ちすると、花に栄養を持っていこうとするので、野菜の味が落ちるとされています。

冬が終わりそうだと感じると、キャベツやダイコンは、花を咲かせようとしてとう立ちを始めてしまうのです。

なので、冬の終わりから春先にかけてキャベツやダイコンを出荷するのはとても難しいです。

畑を有効活用できない

もうひとつ見逃せない理由があります。

野菜は夏野菜と冬野菜に大きく分かれます。多くの農家さんは同じ畑で、夏と冬に別々の作物を作ります。

もし「A」という夏野菜を、通常より遅く種まきしたらどうなるでしょうか?

そうすると秋まで「A」が収穫できるかもしれません。

しかし、そのあとに種まきしたい「B」という冬野菜の種まきができないことになります。

寒くなってから種まきできる野菜はかなり少ないです。冬に採れる野菜の多くは、8月から10月にかけて種まきや定植をします。

寒くなりすぎると、苗が育たないためです。


つまり、仮にAという品目で収穫時期を遅らせることができたとしても、それは次の季節でその畑を使うことができないということを意味しています

都市農業では、畑の面積は限られているので、畑を有効利用することは大事です。なので、1年通しての計画を考えると、おいそれと時期をずらすわけにはいかないのです。

ビニールハウスを作るのはお金がかかる

ビニールハウスは、収穫時期をずらすために有効な設備です。

しかし、ビニールハウスを建てるのにはなかなかのお金がかかりますし、建てたあとも定期的なメンテナンスが必要です
また、ビニールハウスには雨水が入ってこないので、農家さん自身で水やりをする必要もでてきます。

多摩市は、ほかの多摩エリアの街に比べてビニールハウスが少ない土地柄です。そのことも、消費者がはざかい期を感じやすい一因になっています。

はざかい期を嘆くより……

このように、農家さんははざかい期をなくすように努力しているのですが、現実的にはなかなか難しいことも多いのです。

しかし、ポジティブに考えれば、季節を楽しめる、ということでもあります。

スーパーマーケットには、冬にもナスが並んでいますし、真夏にもレタスがあります。だから店頭で季節を感じるのは難しくなっています。

一方で、直売所に行けば、季節を感じるラインナップになっています。

桜が散るとタケノコが出てきます。風が少し冷たくなってきたなと思ったらダイコンが出てきます。

地元の春夏秋冬を感じながら楽しむ食卓、そういうライフスタイルもあっていいと思います。

そして、何より、無理やり時期をずらして作った野菜よりも、旬に採れた野菜がほうが美味しいです。

はざかい期の品薄な直売所に行くとちょっと残念な気持ちにはなりますが、今ごろ畑で苗が育っているのだな、と想像しながら、旬の野菜がたくさん採れる季節を待つ。

そんな生活もまた豊かなのではないでしょうか。

(Y.H.)

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