地元の農業をより詳しく知っていくための用語解説シリーズ 第2弾!
なぜ都市に農業・農地が必要なのか?
都市農業の重要性は、ここ10年ほどで大きく見直されてきました。
2015年には、国会において全会一致で都市農業振興基本法が可決されました。国の政策としても都市農業を日本の農業の一形態として認め、振興していくことが確認された瞬間でした。
では、なぜ都市に農業・農地が必要なのでしょうか?
その理由は「多面的機能」という言葉でまとめられることが多いです。
都市農業には、地元の市民生活を豊かにする多くの役割があるということです。
都市農業の役割とは
たとえば、「景観の維持」です。
ビルや住宅街だけでなく、畑や田んぼのあるどことなくほっとする空間が街のなかにあってよいでしょう。
「食育」も大きな役割です。
都市に住んでいる子供たちは、食べ物がどのように作られているのか知ることがなかなかありません。そのような状況では、食べ物に対する感謝の心も育ちにくいかもしれません。
地域の「生態系の維持」もあります。
とくに田んぼの存在は大きなものです。
多摩市は、まとまった田んぼが残る東京都内でも珍しい土地柄。夏になるとカエルの声が聞こえますが、それは田んぼや用水路が維持されていて川の水が入ってくるからです。
ほかにも「防災機能」も注目されています。
田畑があることで、大雨時の洪水の危険性が減じられたり、農業用の井戸を緊急時には生活用水として使用することができたりまします。
そして、人と人をつなぐ「コミュニティ機能」もあります。
多摩市内にもいくつかの体験農園があります。自然の風や土を感じて心が洗われるような環境では、おのずと人と人とが仲良くなるものです。
都市農業の「多面的機能」の主な構成要素
- 新鮮な農産物の生産
- 豊かな景観の維持
- 食育の機会の提供
- 生態系の維持
- 防災
- コミュニティ機能
世界に目を向けると…
こうした多面的機能があるので、世界の大都市では、わざわざコミュニティ農園を作り出しているところも多いです。
たとえば、デトロイト市では、「人種間の対立の激化や、主要産業であった自動車産業の衰退に伴い、人口流出」が起きているといった背景のなかで、市主導のプログラムもあり、「空き地の都市型農園化に本格的に取り組んで」いるのだそうです。(参照:『まちを変える都市型農園』新保奈穂美著/学芸出版社)
多摩市をはじめとする東京近郊においては、わざわざ空き地を農園にしようとしなくても、都市農業がしっかりと存在しているわけですから、世界的な観点からは、もしかしたらかなりラッキーな状況と言ってもいいのかもしれませんね。
このように都市農業は、貴重な価値を生み出しています。
農業生産者と市民が手を取り合って、都市農業を未来につないでいくことが、この街の価値を高めていくのではないでしょうか?
なお、先ほど引用した『まちを変える都市型農園』はおすすめの良書です。
世界の都市や日本の事例が豊富に掲載されており、都市の住民がこんなにも農的なものに飢えているのか、と気づかされます。
多摩市の近所では、日野市「せせらぎ農園」の事例も掲載されています。機会があったら、ぜひ読んでみてください。
(Y.H)